住宅ローンの滞納を家族に言えず、競売になりそうになったケース
Sさんは大手自動車メーカーに勤務する、50歳のサラリーマン。奥様と高校1年生の娘、中学2年生の息子と埼玉県内の戸建てに住んでいます。
結婚当初から家計管理の担当は、夫であるSさん。奥様には家計費として定額を渡す形です。
手取りは40万円程度。住宅ローンは15万円でしたが、お子さんも公立だったのでなんとかやりくりは出来ていました。
ところが、不況で役職手当や残業代がカットされ、さらにボーナスも大幅に削減。収入は、毎月にすると5万円減収となってしまいます。
しばらくはなんとか貯金を切り崩してきましたが、娘さんの受験で出費が重なり、ついに住宅ローンの返済日に資金不足で引き落としが出来ず、延滞してしまうことに。大きな問題は、このときSさんが、ご家族に収入が下がったことを言えずにいたことでした。何も知らないご家族は、当然ながら今まで通りの暮らしぶりを変えることはしません。
銀行からの督促は何度か来ましたが、それでも家族に言いだすことが出来なかったSさん。
ついに競売開始決定通知を受け取り、愕然とします。やっと覚悟を決め奥様に話すと、当初はオロオロするばかりでしたが、次第に前向きな話し合いが出来たようです。
競売開始決定通知がきてしまうと、所有者は以下の方法しか取ることができません。
- ・このまま競売で落札されるのを待つ
- ・住宅ローンの残額を一括返済する
- ・自宅を任意売却する
この選択肢の中で、Sさんは任意売却をすることに決めました。「任意売却に決めた」というより、これしか選択できなかったというのが本音でしょう。
競売になると、「競売物件」として自宅の住所が公表されます。プライバシーが保たれないことは、お子さんが思春期にあるSさんにとってどうしても避けたいところでした。とはいえ、住宅ローンを一括返済することなんて不可能。消去法で、任意売却が残ったんですね。
さて、Sさんの任意売却はどうなったかというと、ローンの借入先がSさんの会社の提携している銀行だったこともあり、スムーズに事が進みました。無事、予定していた金額で買い手も見つかり、Sさん一家も中学生の息子さんの学区内の賃貸マンションに移り住むことが出来ました。